金価格と原油の乖離現象とは?
商品としての金(ゴールド)を考える際には、2004年以降に顕著になった金価格と原油の乖離現象が興味深いです。
というのは、1970年代から1980年代初めのオイルショックで学んだ経験則から、原油価格の大幅な上昇は、インフレを予見させ、インフレになると通貨の価値が下落するので、反対に金(ゴールド)が買われるはず、すなわち、原油価格が上昇すれば金価格も上昇するはずだと考えられていたからです。
ところが、2004年1月から2005年にかけて、原油価格の指標となるニューヨーク・マーカンタイル取引所に上場されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は50%以上値下がりしているのにもかかわらず、同期間のニューヨーク金価格は横ばいから小幅な下げという対照的な値動きを見せたのです。
ちなみに、2007年から2008年にかけての原油価格の急騰時でも、金価格はそれほど上昇しませんでした。
反対に、金価格が1000ドルを目指した2008年以降は、原油価格は調整局面から値下がり局面に入っていました。
なぜ金価格と原油価格の連動性が失われたの?
これについては、金自体は何も変わっていないのですが、国際経済の構造が変わったためと考えられます。つまり、原油価格の上昇に対する抵抗力が高まったということです。
実際、省エネ技術の進歩と代替エネルギー開発の進展によって、経済全体に占める原油の割合は低下しています。
具体的には、日本の経済規模は、オイルショック以降の30年間で2倍になりましたが、原油消費量は世界全体では30%、日本に限っていえば10%しか増加していません。
また、2008年の原油価格上昇の際には、供給量に不安が生じたオイルショック時とは違い、供給自体は継続されたこともパニックを回避することができた要因でした。
ということで、金市場が見ているのは原油価格の上昇そのものではなく、原油価格の上昇がもたらすインフレなど世界経済の混乱であるということがいえそうです。
なので、原油価格上昇時にそうした兆候が見られたら、金価格も連動して上昇すると考えるとよいかもしれません。
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