どのような背景から外貨投資が拡大したのですか?
日銀のゼロ金利政策を利用して円キャリー取引は世界中に拡大していきましたが、このゼロ金利政策の最大の被害者というのは、実は個人投資家でした。
特に定年を迎えた団塊の世代は、退職金を国内の預金や債券に投資しても、老後に満足のいく生活をまかなえるだけの金利収入を得ることができなくなっていたからです。
つまり、円キャリー取引は、長引く低金利に不満を募らせた末、新たな手法に頼らざるを得なかったという一面もあるのです。
タイやマレーシアなど物価水準の低い国で年金生活を送るほどの勇気はないけれど、金利水準が高いそれらの国々の通貨に投資しようという意欲が湧いても不思議ではありません。
こうした背景から、個人が投資する外貨建て金融商品として、外貨預金や外貨建て投資信託、FXの残高は拡大していったのです。
外貨預金からFXへ
個人投資家の円キャリー取引といっても、最初は米ドルのような身近な外貨預金でした。
それも投資資金は、預けている銀行預金を取り崩すのではなくて、新たに手元に入ってきた資金を振り向けるという消極的なものでした。
その後、豪ドル、NZドル、ユーロなどで預金する人が増えていったのです。
やがて、外貨建てMMFなどにも金融商品が拡大し、また、毎月分配型の外貨建て投信も債券型から配当利回りの高い株式投信へ、さらに、FXを通じて南アフリカ・ランドのようななじみの薄い高利回りの外貨も取引されるようになっていったのです。
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